うみのこ通信

日々の断片

北風

内定先から手続きの案内が届いた。健康診断、卒業証明書など、揃えるものが案外多い。

今日は定時に退社。空が、日が落ちて暗い水色だった。風が薄くて、これから夏が来るみたいな夕方だった。

家の最寄駅はかなり強い北風。ホワイトデーのケーキを買って帰ったので、袋に入ったケーキの箱が風で揺れないように気をつけて帰った。

君たちはどう生きるか

アカデミー賞おめでとう。

初めて見たときは、話の所々わからないところがあって、主題歌もなぜ米津なのかわからなかった。

だが、日が経つにつれ、『地球儀』を聞くとあの壮大な世界が迫ってきて、涙が出そうになる。何がよかったのかとか、うまく言葉では言えないのだけど、「なんだかすごいものを見た」という感想だけが残っている。

粛々と退社日が迫る。印刷設定をしたり印刷をしたり、事務仕事が続く。事務仕事は細やかな気遣いがものを言いそうで、苦手だ。こんなんなら早く辞めればよかった。先輩にいつ言おうか悩んでいる。

風化、表明

社会人になってから、3.11のことを忘れてしまうようになった。地震が来たあの時間は、仕事をしているうちに過ぎて、15分後に「あ、」と思うことが多い。

あの日はまだ中学生だった。学年末テストが近くて、学校に残っていたら地震が来た。私は教室にいた。

友達と「怖いね」と言い合っていたら、近くにいた英語のネイティブの先生が「早く教室から出なさい」と言って、校舎の外へ避難した。プールに溜まった水が、地震の揺れで場外に大きくはみ出して、地面にびしゃびしゃになった。同じ学年の、知らない女の子が泣いた。同じクラスで私をいじめていた男子生徒は笑っていた。彼はもうすぐ退学することが決まっていたので、かなりどうでもよかった。

大きな教室に生徒が集められた。普段は携帯を校舎で使ってはダメだけど、特別に許可が出て親に電話する。繋がらなかった。

車を出せる別の生徒の親が、私の家の近くまで送ってくれることになった。普段はガラガラの道が、すごく混んでいた。夜が迫る暗闇の中、どうしたらいいかわからない車のライトが煌々と光っていた。

家に帰ると、やっぱり誰も帰っていなかった。リビングは、食器棚が開いていて、グラスがいくつか床に落ちて割れていた。中も、ぐちゃぐちゃになっていた。

テレビをつけると、津波の映像とともに黄色や赤に染まった日本列島が右に小さく写っていた。ニュースキャスターは同じことを何度も叫んでいる。ACジャパンのCMが度々入り、「こんにちは」「ありがとう」を横目に見ながら、私はテスト勉強で漢字ドリルをやった。何かに集中していないと、気がおかしくなりそうだった。

固定電話から親の携帯電話にかけると、繋がった。母親は今日中に帰ってこられず、父は帰ってくるかもしれないとのことだった。

 

自分の部屋では寝られず、リビングで毛布にくるまっていると、夜中の1時に父が帰ってきた。安心して、寝た。その次の日に生理が来た。母が帰ってきた。

 

あの日から13年。私は両親に家を出ると言った。泣きながら、いつも大事なことを言おうとすると邪魔するように出てくる涙を堪えられるはずもなく、伝えたのだった。

体が痛い、凪のお暇

1週間の疲れがどっと出る。ジムにもしばらく行けていない。ももの表側?の筋肉が張っている。謎の疲れが溜まり、栄養ドリンクを飲もうかと思ったが今週飲み過ぎているのでやめる。

Tverで凪のお暇のドラマを放送していたので見た。原作を読んでから改めて見ると、原作のエピソードが異なる文脈で使われていたり、オリジナルな展開も多いと知った。だけど話の方向性は原作と同じ方を向いていて、このキャラクターならそう言いそうだな、こういう行動をするだろうなと思う。我聞一成も良い。演出も、凝っていて楽しい。

オリジナルの展開だと、ゴンが凪に告白するために合鍵を回収したり、坂本さんがおばあさん(三田佳子)へのせんべつにブレスレットを渡すシーンがよかった。

言葉のきらめき

終業後、いつもとは違う電車に乗った。入校を考えている脚本スクールの説明会に行くためだ。

地下鉄の駅で降り、駅を出たところにあるセブンイレブンジャスミン茶と蒟蒻畑のチューブタイプを買う。

スクールは綺麗なビルの中にあった。女子トイレの洗面台はまるでデパートの中みたいにキラキラしていて、もはやここで働きたいとすら思った。

放送作家クラスと脚本家クラスの先生が登壇し、ほとんど質疑応答が行われた。私は来る場所を間違えてしまったと後悔しながら、先生の発する言葉をメモにとった。私はお話の骨組みや考え方の枠組みなどを学べたらいいなという感覚で申し込んだが、どうやら脚本家になるには大変な道のりだ。先生の説明も熱が入っている。質問する人を見ながら、この熱気に私はついていけないだろうな…と思ってしまった。

ある人の質問で、「どんな作品を作っても二番煎じになってしまう」という質問に対し、先生が「勉強とは模倣するところから始まる。盗作との線引きは難しいが、模倣でも問題ない」と言っていた。

この言葉に出会うために今日は来たのかもしれない、と思いながら帰った。

第6章のエンディング

朝はマフラーが要らないほど暖かく、夜は生ぬるそうに見えて実は冷たい風が吹いていた。

今週で内定を承諾するか決めなければならない。

一度見えかけたキャリアセンターの道。20代のこの時期に掴むか、別の道から回り込むか。

1日結構悩んでいる。

今月で退職だが、朝ドラをよく見ているせいか「第6章 株式会社SHINSOTSU 完結」感がある。