うみのこ通信

日々の断片

夢の中に帰りたい

 最寄駅に着くと、勤め先を出た時よりも体感で2度くらい低かった。ショートダウンは上半身だけを包み、タイツにズボンだけを履いた下半身には冷たい風が通り抜ける。

 両手をダウンに突っ込み、家まで歩く。ここも寒いけど、能登はもっともっと寒いのだろうと考える。

 「夢の中に帰りたい」。通り道の誰もいない公園を通り過ぎたところで、ふとそう考えた。別に今日見た夢も覚えていないけど、家より、夢の中に帰りたかった。

 「覚めない夢は怖い」。CCさくらクリアカード編では、「夢」が一つのキーワードだった。さくらと、さくらとよく似た秋穂は、2人も知らないうちに双子になってしまう。今まで読者が知ってきた木之本家には、秋穂が当然のように存在し、さくらたちもそれを受け入れている。記憶が全て書き換えられた世界は、目の前にある光景を疑わない「夢」と同じで、そこから出ることはできない。15巻はその「夢」の状態から始まり、14巻までの内容をすっかり忘れていた私は、2人が当然のように双子として描かれ、何も疑うことなく日常を進んでいく様子に恐怖を覚えた。

 夢の中はカオスで、時々現実よりも酷いことはあるけれど、今のある現実が夢ならば、早く醒めてしまいたい。