うみのこ通信

日々の断片

黒と花

祖父のお葬式だった。

昼前に姉たちが家に集合。車で近くの葬式場まで行く。

葬式の開催前に、お線香をあげた。棺桶の窓から細くなった祖父の顔が見えた。生前、最後に会った時とは別人のようだった。

遺影は、6年前、私が成人式の時の写真から、祖父の顔だけを抜き取ったものだった。そう父に教えてもらった。

葬式の開催前まで、控え室で待つ。全く顔を知らない遠い親戚たちに挨拶をする。向こうもそう思っているだろう。

葬式が始まる。近所の寺のお坊さんがお経を唱える。何を言っているのか不明だったが、途中後ろの席からスマホの着信が聞こえたり、前の席の従兄弟が船を漕いでいたりと、なんかみんなフリーダムだった。

お経の最後、お坊さんが伯父、祖父の長男が営む店が、ローカルラジオで取り上げられていた話をしていた。葬式でもこんなにローカルな話をするんだと思った。

棺の中に花を入れる。親戚のおじさんが、一度に大量の花をとって棺に入れていて、「そんなに?」と最初に思ったが、何度も花を入れる順番が回ってきたので、回数を減らすために大量に入れていたのだと後から知った。

花を入れていると、なぜがズボンがやや脱げた状態で花を入れにきたおじさんがいて、その時は正直ドン引きしてあまり直視しないようにしていたが、葬式が終わって家に帰った後、みんなで思い出して大笑いした。

 

焼き場にバスで移動。尚香をして、終わるのを待つ間、ご飯を食べた。量がそんなに多かったわけではないのに、あまり食べられなかった。

納骨の時間が来て、祖父の骨を拾った。右足だという骨はとても太かった。人間の骨はあまり見たことがなかったが、実際に見たからと言って現実感や恐怖は感じなかった。

親族が納骨を終えると、残りの骨を職員の人が骨壷に入れていった。あまりにも太くたくさんあるので、骨壷の中で胡麻をするように骨を砕いて入れていった。普段はゴミを集めるための塵取りと箒を、職員の方が丁寧に扱っていた。塵取りに残った砂のように細かい骨まで、丁寧に集めて入れていた。ありがたい仕事だと思った。

あんなにたくさんあった骨は骨壷にすっかり収まり、人間最後はあの陶器の中に収まるのだと思った。

納骨も終わり、葬儀会場に戻ると、すっかり夕方になっていた。全ての儀式が終わり、外に出ると空気が乾燥していて寒い。

先週、祖父が亡くなった日も、とても寒い日だった。寒いね寒いねと言いながら、家に帰った。