うみのこ通信

日々の断片

最後の日

朝から強い風と雨。通勤列車は座れない。

挨拶用のお菓子が、自分の横幅より大きくて、持ちづらかった。

就業時間の辻褄を合わせるために、いつもより30分早い電車。会社の最寄り駅についたら、いつもの倍以上人がいた。すし詰めのエスカレーターを上る。

 

駅の外は強い雨と風。最終出社日とは思えないほど天気が悪い。折り畳みの傘を差していても、コートの右手側がほんの5分でびしょびしょになった。

会社は、朝早くで人が少ない。総務に挨拶用のお菓子を預ける。

 

昼、同僚にランチに誘ってもらう。外に出ると、雨がやんで、風がやんで、少し気温が上がった。おいしい海鮮丼の店に入る。いつもならすごく混んでいるのに、雨がひどいせいか、年度末のせいか、人が少なかった。鯛飯を食べた。おいしかった。

 

午後、納品。先輩と一緒に行く。先輩も私ももう辞めるから、最近暇。気楽に話をしながら客先に向かい、納品物を受け渡した。5分で終わった。

電車の中で、先輩とアイスが食べたいねという話になり、帰社前にコンビニに寄った。クーリッシュをおごっていただいた。

 

会社に帰って、クーリッシュを手に取ると、思いのほか柔らかくなっていた。吸い込むと、にょろりとしたバニラアイスが小さな吸い込み口から出てきて、口の中で甘く溶けた。

 

夕方、月の締め作業などが終わり、社員証などを返す。いろいろな人に「お世話になりました」と言った。お世話になった人に、お礼を言えてよかった。

 

「退職のご挨拶」メールも、自分が送信する日が来るとは思っていなかったけど、歴代の退職メールをうまく編集して送信した。全社員に放たれるのかと思うと緊張した。

 

会社を出て、後輩と会社近くにご飯を食べに行く。後輩行きつけのお店。「退職祝い」として、後輩がサプライズでプレゼントをくれた。嬉しかった。

 

仕事は嫌だったけど、たくさんのものをもらった。会社の雰囲気も別にそこまで好きじゃなかったけど、嫌いでもなかった。人は好きだった。恵まれた。

 

でも、もう二度と来ることはない。